認定特定非営利活動法人ペッツ・フォー・ライフ・ジャパン

English

ニュース

【第6回 実施】姫路少年刑務所・保護犬育成プログラム

法務省 近畿矯正管区と姫路少年刑務所と連携し、受刑者が保護犬の人馴れやしつけを行う「保護犬育成プログラム」を2025年8月からスタートしました。今年1月で6回目の訪問となりました。受刑者に保護犬の育成に関わってもらうことで、責任感の醸成、自己肯定感や社会的スキルの向上につながり、社会復帰と更生を支援することを目的としています。PFLJでは、これまで行ってきたドクタードッグ活動(動物介在活動)や教育活動の知識と経験を活かし、初めてのプログラムに試行錯誤しながら、月一度の訪問を行っています。

1月の訪問に、PFLJも認定登録されている動物専門の寄付サイトを運営する公益社団法人アニマル・ドネーションのAWGs Specialアンバサダーである阪神ベースボールアンバサダー・秋山拓巳さんが見学にこられました。保護犬を継続的にサポートされている秋山さんは、2023年 新春にPFLJにご来室されています。

*** 2023年1月にPFLJにご来訪された時の様子 ***
・サンテレビニュース 【2023年1月11日 阪神タイガースの秋山拓巳投手が動物保護団体に寄付】
・PFLJ HP      【2023年1月18日 阪神タイガース秋山選手が来訪されました】

***AWGsとは?*** 
AWGs(アニマル・ウェルフェア・ゴールズ)とは、動物の目線で考えたSDGsのこと。詳しくはこちら
AWGsのSpecialアンバサダーとして、2025年4月に秋山さんが就任されました。そして今年1月、阪神タイガースの大山選手がAWGs Specialアンバサダーに就任されました。詳しくはこちら

***今回の見学を受けたレポートが、アニマル・ドネーションのHPで紹介されています***

第6回の訪問では、保護犬のヨーゼフくん、きこちゃん、ルカくん、みーくん、新たに3ヶ月の子犬のリコちゃんを連れていきました。はじめの講義では、まずは見学にこられた秋山さんからご挨拶です。

そして、前回までの講習のおさらいの前に、保護犬たちに関するニュースを2つを受刑者たちと共有しました。一つ目は、保護犬のみーくんが新しく家族として迎えられることが決まり、1月の訪問が最後となることです。

二つ目は、リコちゃんの初参加に関してです。リコちゃんの紹介をして、子犬の習性・接し方のポイントをお伝えしました。これまでに一貫して「褒めるしつけ」に関してお話してきましたが、子犬の場合はさらにしっかりと褒める必要があることを説明しました。リコちゃんは散歩トレーニング以外の基礎的なトレーニングは、まだスタートしておらず、今回のプログラムから本格的にしつけがスタートすることを伝えます。

犬は人の表情や動作をよく観察しています。自分が何かしたとき、しっかり褒められることにより、「今の行動はいいことなんだ」「喜んでもらえる!」という成功体験から犬は自信を育んでいきます。そして、褒めてくれる人との信頼関係への構築につながります。受刑者は自分たちがリコちゃんに教える「責任」を感じ取ったようで、緊張した表情で話を聞いていました。

リコちゃんは人懐こく、甘えん坊で、パワー全開ですが、まだ子犬のため、落ち着きがなく、集中力も短いことを伝えます。身体も未成熟なため、成犬と比べてトイレの回数は多いです。そのことから、いつでもリコちゃんがトイレできるよう、ペットシーツを設置することを伝えます。リコちゃんがペットシーツ上で、トイレができたらしっかりと声を出して、オーバーに褒めることをお願いしました。

子犬の習性や褒める重要性への理解を深めたところで、実践です。椅子を動かし、保護犬たちの飲み水を用意し、おやつポーチを持つなど、受刑者たちは自分たちで準備をします。準備が整ったところで、受刑者たちに保護犬たちのリードを託します。先月と同じ受刑者と保護犬のペアもいれば、初めてのペアもいます。保護犬と受刑者の組み合わせは受講回数や相性で決めています。ペアリングを行うことはとても重要です。保護犬の性格やトレーニングレベルも様々。違ったタイプの保護犬とトレーニングすることによって犬による違いやコツなどを学んでもらいます。今回が最後の訪問となるみーくんは、前回と同じハンドラーに託します。


まずは、おすわり、おて、おかわり、ふせなどの基礎的なトレーニングからおさらいです。1ヶ月ぶりの環境の中で、受刑者も保護犬も感覚を取り戻していきます。保護犬としっかりとアイコンタクトが取れるように、おやつの持つ位置などを確認し、精度をあげていきます。

今回は、「一歩下がってまて」と「ポール」を新たに練習に加えました。保護犬をおすわりさせ、「まて」の指示をし、人が一歩下がります。できるようになると、下がる歩数を増やし、ポールへの距離を広げていきます。「ポール」はハンドラーの指示でコーンなどの目標まで行って帰ってくることです。

ポールが得意なヨーゼフくんですが、ハンドラーの指示がスムーズに通らず、その場で時計回りに回ったり、おすわりをしたり。ハンドラーの手の動きからツイスト(時計回りに回る)と勘違いしているように見受けられました。ドッグトレーナーのスタッフのサポートで、手の動きを工夫し、言葉とジェスチャーを一致させ、ヨーゼフくんへの指示を練習します。何度か繰り返すうちに、上手にポールができるようになりました。

受刑者と保護犬とのトレーニングを横でそっと見守る秋山さん。時に受刑者に言葉をかけ、コミュニケーションをとっている姿も見受けられました。今回の見学にあたって、事前に施設へお越しいただいたのですが、その時の様子はこちらからご覧いただけます。

リコちゃんは、初めての場所・ハンドラーとのトレーニングのため、ふれあいを多めにし、楽しく集中力を保たせながら、基礎的な内容を反復していきます。子犬の育成には時間と忍耐を要します。先に触れたように、子犬は身体が未成熟で回数は多いことから、常にペットシーツを配置しておく必要があり、上手にトイレができた時の褒め方を受刑者たちには伝えています。

トレーニングの途中で、トイレをもよおしたリコちゃん。自らペットシーツの方に行き、上手にトイレができました!その瞬間、その場にいたほとんどの人がリコちゃんに注目し、「リコちゃんすごいね」「おお〜」とそれぞれ口にしながら、拍手で褒めていました。室内は、暖かな一体感で満たされていました。おトイレをしてスッキリし、周りの人たちの嬉しそうな様子にご機嫌で得意げな顔のリコちゃんでした。


一通りできたところで、この日練習した内容を一組ずつ披露です。他の人のトレーニングの成果をみることも勉強の一つになります。上手にできていること、練習が必要なところ、自分が担当していない犬の動きなど、目で学べることが多くあります。一人ひとり終わった後は、拍手で席に戻ります。


最後はブラッシングと体拭きをします。ハウスで待機していたきこちゃんはブラッシングから参加しました。震えることや、そろりと忍足で逃げようとすることはなく、凛とした姿で立ち、受刑者から丁寧にブラッシングされていました。リコちゃんはラバーブラシで遊ぼうとしていたので、フードを使ってリコちゃんの「遊びたい!」という気持ちを逸らすようアドバイスします。片手におやつ、片手にラバーブラシと、受刑者は上手にブラッシングをしていました。


6回の訪問を終え、受刑者たちの表情に変化が見られます。特に、笑顔が多くなったように感じられます。受刑者の表情が和らぐことで保護犬たちにも安心感が伝わります。スタッフが受刑者の一人に、「前回のトレーニングから、今日まで保護犬たちのことを考えていた?」と聞くと、少し間を置き、「めっちゃ考えていました。この日を楽しみに待っていました」とはにかみながら答えていました。

犬は、そのふわふわとした毛並みや温もりだけでなく、心を通わせ信頼関係を築くプロセスを通して、「他者を思う」気持ちを学ばせてくれる存在であることを改めて気づかせてくれます。


受刑者たちの受講後の感想文を一部抜粋で、以下ご紹介いたします。

・今回は、元阪神タイガースの秋山さんがゲストとして来てくれました。最初、秋山さんが来てくれると聞いた時は、かなりビックリしました。話を秋山さんから直接聞かせてもらいました。

秋山さんも、動物が昔から好きだそうで、実際に犬を飼っているそうです。単純に犬が好きだからこのプロジェクトに参加しているのではなく、犬に同情している訳でもなく、誰かや世の中の為に役に立ちたいという気持ちが自分には伝わりました。

秋山さんの犬を見る目、僕達を見る目は本当に、今は言葉になりませんが、何か、心で訴えているような感じでした。自分も外に出たら、自分の為ばかりに生きるのではなく、誰かの為に必死に生きようと思います。近くに居てくれている人、自分の事を想ってくれる人を大切に、大事に、一生懸命考えて、生きていきたいです。

・今回でチワワのみーくんが最後ということを知り、とても淋しいです。

改めて犬が可愛いと感じ、そして社会復帰後に犬を飼うことによって、自分の生活リズムを整えることにも繋がる、と気づくことができたり、様々なことを教えてもらえたこともあるので、とても名残り惜しく思います。

新しい家でも、元気に過ごして欲しいです。ありがとう、みーくん元気でね。

・今回の講習で、新しくやり始めたことが、待ての状態で、1歩さがって待って1歩前に出ておやつをあげるという練習です。はじめは、他に気を取られてしっかりと待つことができなかったけど、回数を増やすごとにしっかり僕と目が合っている状態で待てていたのですごいなと思いました。

・犬にしつけをする際に犬の気持ちを考えなければ言う事はなかなか聞いてくれません。頭ごなしに、おすわりやおてと合図を出しても表情が暗かったり、声のトーンが低かったり、リードを雑に引っ張ったり、怒ったりすると犬のやる気は下がるし、恐怖に感じる可能性もあると思います。どうしたら言う事を聞いてもらえるかを考えると、笑顔で向き合い、優しく名前を呼んであげたり、犬の目線に合わせてみたりしようと考えました。他にも、呼ぶタイミングであったり、合図を出すタイミングや、ほめるタイミングや、エサをあげるタイミングも大事という事にやっていくうちに気付きました。1時間近くプログラムをするので、犬の集中力も長く続きませんでした。他に気を取られている時に呼び戻す事を次は出来るようにどうすれば良いか考えておきます。

このように犬の気持ちを心の底から考えて犬と接しているように、人の気持ちもしっかり考えていこうとこのプログラムを通して思いました。今回起こした事件も人の気持ちを考えていたら起こす事のなかったはずの事件だと気付きました。とは言っても過去には戻れません。もう刑務所には来る事のないように再犯のない人生を送りたいです。人の気持ちを考えて、どうしたら喜んでくれるかを考えて起こす行動の方が人生は豊かになるのでないかと思うので小さな気配りからでも少しずつ始めます。